沖縄というと観光地のイメージが強いけど、
僕たちにとっては当然、生活の場であって、
島の恵みに感謝しながら、日常という暮らしを紡いでいる。
うつくしい海、自然があり、南国の食材、
おおらかな人々とのやさしい交わり。
ものづくりに対して真摯で、暮らしを楽しむ。
そいういう環境の中から生まれるものだから、
彼らがつくるものは「沖縄にしかないもの」になる。
今回紹介するお店は、もしかしたらみなさんの
抱いている沖縄のイメージとは違うかもしれない。
でもぼくは、彼らの存在やその姿勢、生み出すものが、
いまの「沖縄らしさ」のひとつなんじゃないかという気がしている。
愛知を訪れるみなさんに、彼らとの交流を通して、
沖縄の空気を少しでも届けられたら幸せだな、と思う。
薄いグリーンの扉を開けて中に入れば、
そこには山型の食パンが並んでいて、香ばしいパンの香り。
国産の小麦と天然酵母に塩と水。
シンプルな素材で作られたパンは、澄んだ味わいがする。
ふんわりとした食感をそのまま楽しんだり、
軽くトーストしたり、サンドイッチにしたり。
主役にもなれるし、脇役にもなれる。
しっかりとした味わいを感じさせながら、ほかを邪魔しない、
すーっとカラダに溶け込んでいくようなやさしいパン。
それが、ippe coppeのパン。
島豆腐のおからを使って、焼いてつくるドーナッツ。
ジーマーミー(落花生)や紅芋など、沖縄の食材を使ったり。
黄色い屋根のちいさな古民家のその店は、
名護という本島北部の町にポツンとある。
扉を開けたらおとぎ話の世界に飛び込んだみたいで、
次々と焼きあがるドーナッツは
魔法かなにかで作っているんじゃないかと思えてくる。
その日のおやつだったり、家族へのお土産だったり、
友人への差し入れだったり。
いろいろな理由で、たくさんひとがこのドーナッツを買っていく。
それは、ドーナッツがおいしいから、というのはもちろんなんだけど、
「自分の暮らしの中に、このお店があることがうれしい」、
そんな風に思わせてくれるお店だからなんじゃないだろうか、
と僕は思っている。
「自分の足にあったものを、長く大切に履いてもらいたい」。
そんな思いで、宮古島にある工房兼お店に訪れた人だけに、
足のサイズを丁寧に測り、サンダルを作っていた。
その穿き心地は評判で、宮古島の隣、伊良部島出身の彼は
「ものづくりは暮らしの一部なんです」と笑った。
昨年末に山口県に移住して、
あたらしい暮らしの場づくりに勤しんでいる。
工房で、大きな背中を丸くして作業する姿や、
革について語り始めると止まらなかったことを思い出す。
あたらしい場所では長らく準備していた靴や鞄の製作を
本格化させるといっていた。
ぼくはサンダルを持っているのだけど、穿きやすく、歩きやすくて、
どんな場面でも違和感なく馴染む、
まさに暮らしに寄り添ってくれているような感覚。
だからめっきりほかの靴の出番が減ってしまった。