
  
    沖縄に移住したばかりのころに、
      インターネットかなにかでたまたま見かけた情報がなんだか気になって、
      すぐに出かけたのがピパーチキッチンだった。
      仕事でもプライベートでもたくさんのお店を回っているけれど、
      たぶんその、一番最初。 
  オーナーのやぶくんは普段はおどけてるけど、
    料理となれば一流で、島の食材に次々と魔法をかける。
    ハンバーグは驚くほどふっくらとしていてジューシー、
    野菜は収穫されたことに気づいていないかのように瑞々しい。
    どんな料理だって、やぶくんの「作品」になる。 
  マリヤちゃんが細やかな気配りで動き回っていて、
    こじんまりとしたこの店をぼくはすぐに好きになった。 
  こんなにおいしくて、居心地の良いお店が沖縄にあると知れたことが嬉しくて、
    これからはじまる沖縄での暮らしが楽しみになった。 
  ぼくがピパーチキッチンに通うのは、いまでもあの時と同じように、
    おいしい料理と、わくわくと、居心地の良さを感じさせてくれるから。 
  ここは、沖縄での暮らしの原点のような、大切な、ちいさな食堂。
  
  
  
  
  
  「世界観」というと、ちょっと簡単に聞こえすぎてしまうけれど、
    ぼくは「オハコルテ」が生み出す世界観が大好きだ。 
  そこにあるのは季節のフルーツを使った宝石みたいなタルトに、
    鳥のカタチをしたかわいらしいサブレ。 
  焼き菓子のお店は何かの物語のなかに迷い込んだような気にさせてくれるし
    (だからそこにはきっと、童話のなかに出てくるような
    おいしそうなお菓子があるに違いない、と期待させてくれる)、
    ベーカリーカフェは外国のオシャレなカフェにきたような高揚感と、
    一方でいつまでもここでコーヒーを飲んでいたくなるような
    落ち着きを与えてくれる。 
  特別な場所のようだけど、実はすごく暮らしに寄り添っていて、
    だから人はオハコルテにまた行きたくなるんだと思う。 
  オハコルテはいつだって食べることを楽しくさせてくれて、
    それをだれかと分かち合いたくさせる。
    そしてそれが、僕たちの暮らしにささやかな喜びの花を咲かせる